家計簿は、企業が作る損益計算書(決算書)と似ています。
損益計算書とは、日々の取引を記録したものをまとめて作るもので、会社の一定期間の収益と費用およびこれらの大まかな内訳を把握する事ができる資料です。
損益計算書の数字が悪ければ、当然経営を改善していかなくてはいけないとなるのですが、損益計算書では大まかな原因しか把握できません。損益計算書は日々の取引の集積でしかないので、経営を改善しようとすれば、損益計算書を作る元となった日々の取引に焦点を当てなくてはいけないのです。
ドラマなどで、銀行員がペラペラの損益計算書だけを見て融資先にあれやこれや注文をつけるシーンを見かけますが、本当に融資先を育てようという気概のある銀行員であれば、損益計算書以外の帳簿を見て、一緒に改善策を講じるべきですね。
そして、これはFPにも同じ事が言えます。
お客様から家計改善の相談を受ける時、家計簿を見せてもらったり、ざっくりとした家計簿のようなもの(月間収支表)を作ってもらったりして相談・アドバイスを行うFPはダメなFPです。なぜなら、そんな事は、先程例に挙げた銀行員と同じように、大まかな原因を把握して表面的なコンサルティングをしているに過ぎないからです。
家計改善をするなら、家計簿を作る元となった原因にアプローチしなくてはいけません。すなわち、レシートや領収証・保険証券等を分析しなければいけないのです。
分かりやすく例えると、家計簿を見て食費を削る余地があるという大まかな原因は、FPでなくても分かるのです。ですから、きちんとしたFPは、食費を削る努力をしましょうとは言いません。
レシートを見て、外食が多くないか、食材の買値が高くないか、余分な食材を買っていないか、交際費を食費として計上していないかなど、様々な角度から食費が多い原因を分析して、お客様の優先事項と照らし合わせて適切な落としどころを探っていきます。
たまに、家計改善の相談なんて誰にでも出来そうと言われますが、お客様に相談料を払う価値を分かって頂く事も含めて一般の方の想像よりも難易度が高いですし、FPの実力差が分かりやすく表れるやりがいのある分野でもあります。